「1人で1日250ヶ所の水田水位の見回り」から
「冠水センサーで水位管理」へ
ELTRESで実現する稲作×IoT
ELTRESでは、センサーを用いた農作業の効率化・省人化を目指しています。
今回は稲作での事例として 、秋田県横手市の「農事組合法人みずほ」の熊谷様にお話を伺いました。
「従事者の高齢化」「重労働」
稲作農家の現状
就労者の高齢化や、収益の低下、若手就労者の取り組みなど、稲作農家における現状は?
私は、「農事組合法人みずほ」という農業法人の立場から、代表理事である父と一緒に稲作に取り組んでいます。
秋田県横手市において、稲作に従事している人々の高齢化は着々と進んでおり、現在中心になって取り組んでいる人たちの多くは70歳代です。
あと少し経つと、熟練の稲作従事者が減少していってしまいます。
若い世代になんとか代替わりできたとしても、「知識・経験」という部分に関しては、40〜50年稲作を行ってきたこれまでの世代の人たちには敵いません。
すなわち、次世代の人たちは、「知識・経験」という武器を持たない状態で、他の農家さんや他の食品と戦っていかなくてはいけないのです。
「知識・経験」という感覚を、何か別のものに置き替え、更に労力を減らす努力を行う必要に迫られているのが稲作農家における現状と言えるでしょう。
稲作において重要な季節は?
稲作において大変な季節は、春と秋です。
すなわち、「田植え・稲刈り」の季節ですが、その際は通常時の7〜8倍、15人ぐらいの人員が必要になります。
結構な重労働であるにも関わらず、この際に雇う人たち方々も、皆70〜80歳代なのです。
本来は、ご本人たちも引退したいはずですが、無理を言ってなんとか来てもらっています。
また、稲作の仕事で重要な「水の管理」に関しても、これまでは3人体制で250ヶ所ぐらいの田んぼを見て回っていましたが、そのうちの2人が、腰や足を悪くし、現在では私の父が1人で全てを見ています。
この状況をそのまま将来的に自分が受け継ぐというのは、正直現実的ではありません。
稲作における重要課題「水管理」
稲作における水管理の課題は?
水田の水管理で発生する課題は、「圃場からの水漏れ」で、その結果起こるのが「雑草の繁殖」です。
雑草の対策として除草剤を使用するのですが、水管理がきちんとできていない場合、水が漏れて薬が流れて行ってしまうことがあります。
そういったことを要因として、雑草が生えてしまうと養分を吸い取られて稲がきちんと育たないですし、刈り取る際もコンバインに絡まってしまい、全く仕事が進まず、悪循環に陥ってしまいます。
この非常に重要な水管理を250ヶ所、夕方に毎日1人で行わなくても済むように、何かに形を変えて同じ結果が出るようにしなくてはいけない、というのが一番の課題です。
人力からIoTへ
「水管理」問題を解決するためELTRES冠水センサーを導入
ELTRESを活用した冠水センサーの実証実験で、上記の課題をどう解決しようとしたのか?
先ほど述べた通り、田んぼを1人では回りきれない現状から、若い人たちの力を借りたとしても、「朝もしくは夕方日が沈むまで見て回って欲しい」とお願いするのは働き方改革という観点からも相応しくありません。
気合や根性でなんとかなる話ではないのです。
やはり水が漏れていることを知らせてくれる、何かしらのセンサーなどを導入する必要性を感じていました。
その折に、このELTRESを活用した冠水センサーを紹介していただいたのです。
現在は、このセンサーを田んぼにつけてみて、実際に水漏れを適切に知らせてくれるかどうか、すなわち課題解決に導いてくれるかどうか、実証実験を行いました。
冠水センサーを使った実証実験で分かったことは?
しばらく使ってみて、実際にいくつか水漏れを検知してくれたので、その点に関してはすごく助かりました。
泥水の中に棒を打ち込みセンサーを取り付けるので、その部分の難しさは感じております。
しかし、この取り組みは今後この先20年30年と、息子達の代になっても続いていきますので、メーカーさんと二人三脚で長い目で良いものを作り上げられたらな、と思っています。
ELTRES冠水センサーの効果
その他、実証実験での結果は?
この取り組みによって、狙い以上の効果を実感できる点がありました。
田んぼに水を張っていく段階において、水が十分に溜まったことをセンサーが教えてくれることがわかったのです。
田んぼに水を張る作業というのも、なかなか大変であり、100×100メートルの田んぼにしっかり水が貯まるまで、2、3日かかってしまいます。
水が溜まったかどうか、その都度確認しに行くのもなかなか手間のかかる作業でしたが、冠水センサーを使用することで、その手間が省けそうだということが判明しました。
水漏れ検知に加えて、水が溜まったかどうかも教えてくれるというのは、副産物的な効果として嬉しく思っています。
また、費用対効果を改善できたのも非常に大きいです。
これまで費やしてきたコストを具体的に数値化してみると、2ヶ月間毎日2時間かけて100箇所を監視したと仮定して、トータルで60日×2時間=120時間を要していることになり、その労力を時給1,000円として考えると、2か月で12万円のコストが発生する計算になります。
プラスして、水漏れに気がつかず雑草が生えてしまって除草剤が必要になった場合、一つの田んぼに対し、2.6万円の追加費用がかかります。
すなわち、冠水センサーを導入しない状態での見回り+いくつかの田んぼで水漏れが発生して雑草が生えた際のトータルのコストは、約20万円を想定しておかなくてはなりません。
ところが、冠水センサーは約2万円で導入可能であり、この差は非常に大きいです。
冠水センサーを導入することで、余計な費用発生を未然に防げるのは、収益の少ない稲作においてはとてもありがたいことなのです。
農業×IoTの今後の展望
水漏れをチェックする際は、大体軽トラックに乗って見て回っているのですが、大体の場合水が抜けて行くのは、その道路の反対側「水尻」なのです。
道路の反対側の端っこが水漏れしていないかしっかりと見ろ、と言われてもこれがなかなか難しい作業です。
ましてや田んぼは250ヶ所もあります。
田んぼの反対側に回り込んで、1日 1回250ヶ所毎日見られますかっていうと、非常に困難な話です。
これをセンサーが水漏れを検知した際のみ、確認しにいけば良いという変化は、IoTを活用した農業の入り口であると感じました。
周囲の反応
父の例からも、今私がいるこの場所の真ん前の田んぼにもセンサーを取り付けたのですが、「そんな目の前の田んぼにセンサーなんかいらない」という声もありました。
毎日見ている真ん前の田んぼの水漏れに気づかないはずがない、と。
しかし、私が東京に出張に行っている間、冠水センサーの端末のアラームが鳴っているので、確認しに見に行ってもらったところ、案の定道路の反対側から水漏れを起こしていたのです。
皆が毎日見ている田んぼであるのにも関わらず、誰も気づかなかったことをこのセンサーが教えてくれました。
この取り組みに対し、周囲から「ちょっと遠くの方や飛び地など、見回りに行きづらい田んぼにも取り付けたらどうか?」という声が出てきたことは一歩前進したな、と感じました。
また除草剤が水漏れによって流れてしまった場合、その都度1〜2万円というお金が出ていってしまうため、保険的な意味でも冠水センサーをつけておくのは良いことだと感じています。
冒頭で述べた通り、次世代の「経験・知識」が乏しい人たちが、それまでの世代と同等な結果を残していくには、このようなIoTの導入は欠かせないと実感しました。
今後、ELTRESに求めるもの
今後、ELTRESに求める改良や、こうなったらいいな、という部分は?
現在は、田んぼに割り振られた数字に対してセンサーがLINEで教えてくれて鳴り、確認に行くような形ですが、田んぼの数字と場所をすり合わせるのも大変なので、今後はELTRESに搭載されているGPS機能を活かし、地図ツールなどと連動させて、スマホのアプリからピンポイントで水漏れを教えてくれるような改良をしてくれるとありがたいなと感じています。
それにより、仕事の効率化が更に図れるようになると思いますので、ぜひお願いしたいです。
※今回使用した冠水センサーの詳細は下記URLよりご確認ください。
https://eltres-iot.jp/work/solutionset-026/
最後に
ELTRESは安定通信・長距離伝送・低消費電力・高速移動体対応・GNSS標準搭載の特長を生かして様々な業界でご活用いただいております。
【活用例】
・物流:移動車輛の監視
・環境モニタリング:溜池の水位監視
・インフラ監視:街路灯の電力監視と設置位置管理
・農業・畜産:放牧牛のトラッキング
・人の安全みまもり:CO2センサで「3密」を検知
・スポーツトラッキング:アドベンチャーレースでのトラッキング
・IoTプラットフォーム:温湿度、不快指数、安全管理、物流管理、獣害被害対策、見守り等
「興味がある」から「実際に活用方法を検討している」までどの段階でも構いません、お客様のご希望に合わせてお話しさせていただきます。
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