ELTRESを活用した感染症予防支援システム
ネットワークやセキュリティ、IoT分野における高い信頼性を持つイノベーション企業・株式会社クレスコ。ELTRESを活用した「CLIP IoT デバイス」(CLIP)は、電気通信大学との共同研究〈超スマート社会のためのIoTシステムに関する研究〉の第一弾プロジェクト「CLIP新型コロナ感染症予防支援システム(https://wakuwaku.cresco.co.jp/solution/clip-prevention)」にも活用されています。CO2センサーを利用し、二酸化炭素濃度から三密を防ごうというこのシステムは、2020年8月末の発表後すぐにメディア取材が入るなど話題となっています。
今回は株式会社クレスコ ビジネスイネーブルメントサービス本部 シニアサービスマネジャーの草野和文さんにお話を伺いました。
「CLIP IoT デバイス」
クレスコの主な事業や特徴とは?
クレスコは東証一部上場のSIer企業で、ネットワーク、サイバーセキュリティ、パッケージソリューション、IoTに特化した企業です。得意分野はネットワーク構築、設計、基盤インフラ、サイバーセキュリティです。クレスコは、技術者社員全員がネットワークやセキュリティなど複数の公的資格を有しており、非常に高いスキルを持った人材をそろえているのも特徴の一つです。高いスキルを持つ社員は情報セキュリティ系の公的機関内でもご支援させていただいております。
また、昨年度にはIoTビジネスの事業を本格的に立ち上げ、ソニーネットワークコミュニケーションズさんが始めたELTRESと協力して進めています。他にも新規事業としてはクラウドビジネスも立ち上がりました。
ELTRES端末「CLIP IoT デバイス」(CLIP)とは?どのような用途を想定して開発されたのでしょうか?
CLIPは「IoTのハードルを下げる、万人受けするIoTデバイス」を目指して開発しました。というのも、今のところ市販されている多くのIoT機器は用途が特化した専用端末がほとんどで、初期費用も高くなってしまうなど、ハードルが高くなってしまっているんです。
しかし、ELTRESは手の届きやすい価格帯のサービスですし、「IoTは多くのお客様の手に届くものである」とアピールするためにも汎用的な端末が必要だと考えました。
CLIP はどのような機能を搭載しているのでしょうか?
GPS、温度、湿度、加速度のセンサーを搭載しています。また、BluetoothとWi-Fiにも対応しているので、端末が持っていないセンサーとの接続も可能です。さらにはI2Cというセンサーにおけるメジャーな通信方式に対応した端子を持っているのも特徴で、専用の開発をすることなく低コストでいろんなセンサーと連携できる汎用性を実現しています。
また、開発当時から「お客様が考えている以上に、IoTにできることがたくさんある」と考えていました。ですからPoC(※)が実施しやすくなるよう、複数のセンサーを搭載しています。例えば、物流系のお客様が「荷物の温度管理をしたい」と言って来られた場合でも、複数のセンサーを搭載していれば「GPSで位置情報も一緒に管理しましょう」と言えますし、加速度センサーを使えば荷物に衝撃が加わったかどうかまで確認できるんです。荷物の温度管理だけでなく、乱暴な運転をせず最適ルートを通っているかも管理できるというのは、お客様にとって大きなメリットになりますからね。
(※)Proof of Conceptの略称で、事業構想における仮説の証明や、システムの実現性などの、投資判断材料を集めるための実験。
クレスコがCLIPの通信技術としてELTRESを採用した理由は?
ELTRESは1日の発信回数が480回もあり、また高速移動中の通信も可能なことから、他のLPWA回線に比べて優位性があると考え採用を決めました。それにELTRESが国内メーカーであるソニーさんが新しく始めた規格という点が大きかったですね。
「CLIP新型コロナ感染症予防支援システム」
「CLIP新型コロナ感染症予防支援システム」の概要について教えてください。
「CLIP新型コロナ感染症予防支援システム」とは、部屋にCO2センサーを内蔵したCLIPを設置し、二酸化炭素量、温度、湿度の状態をモニタリングすることで、何人が入室しているかを算出して三密状態を防ぐというシステムです。また二酸化炭素の濃度が上がるとアラートを飛ばすことにより、部屋の換気を促すことにもつながります。
また、三密に限らず、部屋のCo2濃度が高いと次のように人体に悪影響があると言われています。
【CO2濃度の人体への影響】
1000ppm:思考力に影響し始める
2000ppm:眠気を感じる人が出てくる
3000ppm:肩こりや頭痛を感じる人が出てくる
3000ppm以上:集中力や意思決定に支障をきたす
一般的には400ppm程度が屋外の状態で、室内は800ppm程度と言われています。建築基準には室内のCO2濃度を1000ppmに抑えるという決まりがあるのですが、油断するとすぐに1000ppmは超えてしまいます。学生時代に授業中眠くなったのは、もしかしたらCO2濃度の問題も大きいかもしれません。
このシステムを活用すれば、新型コロナウイルスの予防だけでなく、勉強や仕事環境の整備にも役立つと私たちは考えています。
また、このシステムに使われているCLIPはCO2センサーを外部接続していません。通常のCLIPに搭載されているバッテリーを外し、そのスペースにI2CでCO2センサーを接続して内蔵させています。CO2センサーを内蔵させたCLIPの場合、基本的に据え置きで利用するはずですので、USB給電で動作させる仕組みです。このCO2センサー内蔵CLIPは、従来のCLIPに加えてオプションとして販売をさせていただいております。
クレスコと電気通信大学との共同研究「超スマート社会のためのIoTシステムに関する研究」として「CLIP新型コロナウイルス感染症予防の研究」 が選ばれた経緯を教えてください。
我々は昨年から、限られたリソースでの効率的なスキルアップやCLIPの普及を目的として、共同研究先としていくつかの大学にアプローチしていました。その中で特にIoTに力を入れて「超スマート社会」の実現を目指している大学である電気通信大学さんと、2020年4月から共同研究をさせていただく運びとなりました。
そして、やはり時流として、新型コロナウイルス対策に取り組むのは自然な流れでした。正直なところ、共同研究について話をし始めた2月頃はここまで長引き、そして大きな問題になるとは思っていませんでした。しかし、4〜5月にかけて社会がほとんど止まってしまう事態となり、IoTでできるコロナ対策は何かないかと考えはじたのです。CO2に着目して生まれたのが今回の「CLIP新型コロナ感染症予防支援システム」です。
ELTRESはIoTに最適な通信規格
ELTRESにどのような可能性を感じていますか?
ELTRESには他のLPWAと比較して優位なところもあれば、使い方によっては不便な面もあります。しかし、私たちがその部分を解決してしまえば、他のLPWAに勝る回線になると考えています。
例えば、ELTRESにはGPSが入らない環境では通信ができないという面がありますが、その一方でELTRESは他のLPWAよりもはるかに多くの通信回数と通信容量を誇っており、IoTには最適です。ならば私たちのアイデアによりIoTデバイスの構造を変えたりアンテナ技術などを駆使してELTRES特有のGPS周りの特性を良い意味でカバーできればと思い、研究や開発を進めています。
ELTRESはLPWA規格としては後発となりますが、だからこそ私たちはそんなELTRESと一緒に成長していきたいと考えています。
株式会社クレスコ( https://wakuwaku.cresco.co.jp/ ) ビジネスイネーブルメントサービス本部 シニアサービスマネジャー 草野和文)
最後に
ELTRESは安定通信・長距離伝送・低消費電力・高速移動体対応・GNSS標準搭載の特長を生かして様々な業界でご活用いただいております。
【活用例】
・物流:移動車輛の監視
・環境モニタリング:溜池の水位監視
・インフラ監視:街路灯の電力監視と設置位置管理
・農業・畜産:放牧牛のトラッキング
・人の安全みまもり:CO2センサで「3密」を検知
・スポーツトラッキング:アドベンチャーレースでのトラッキング
・IoTプラットフォーム:温湿度、不快指数、安全管理、物流管理、獣害被害対策、見守り等
「興味がある」から「実際に活用方法を検討している」までどの段階でも構いません、お客様のご希望に合わせてお話しさせていただきます。
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