再配達0へ!関西電力送配電株式会社のELTRES導入事例

昨今のコロナ禍においては宅配便の利用率が高くなっています。在宅の機会が多くなったとはいえ、受け取りそびれてしまうことはあるでしょう。そんなときに便利なのが「宅配ボックス」ではないでしょうか。

関西電力から分社化・事業承継された関西電力送配電株式会社(以下、関西電力送配電)では、新たな取り組みとして「電柱等を活用したマンション向け宅配ボックスサービス」を共同開発しました。そこにはELTRESの長距離安定通信・低消費電力性が活かされています。いったいどんなソリューションなのか、関西電力送配電 企画部 新規事業グループの前川将之さん、白神有貴さんにお話をうかがいました。


関西電力送配電の事業

関西電力送配電(https://www.kansai-td.co.jp/)ホームページ

——関西電力送配電の主な事業内容を教えてください。

前川

当社は電気事業法改正に伴い、発電・送配電・小売の3つの事業を担ってきた「関西電力株式会社」から分社化された新会社です。2020年4月には関西電力から一般送配電事業が事業承継されています。

——昨今の電気事業について教えてください。

前川

電気事業を取り巻く環境は大きく変化しています。特に送配電事業においては人口減少や節電の潮流が起こっていることから系統需要が落ち、先行きも不透明です。当社も送配電会社ではありながら自立した経営基盤を固めるため「お客様と社会のお役に立ち続ける」の経営理念のもと、新たな事業領域の開拓・新サービスの開発に果敢に挑戦しています。

とりわけ我々「企画部 新規事業グループ」は当社における新規事業の開発部隊であり、今回ご紹介する「電柱等を活用したマンション向け宅配ボックスサービス」もそうした新規事業として生まれました。


電柱の特性を活用したサービス

——「電柱等を活用したマンション向け宅配ボックスサービス」の概要を教えてください。

白神

送配電事業者の強みを活かし開発した、全国初の“電柱吊”宅配ボックスサービスです。本サービスにより、マンション敷地内および敷地内隣接歩道上の“電柱”に設置した宅配ボックスを当該マンションの居住者様にお使いいただけるようになります。

電柱が持つ「①どこにでもある」「②電源がある」「③位置(経度・緯度)情報がある(配達場所としても明確にできる)」という特性を有効活用しており、電柱に吊す形式で設置できるため、アンカー固定など大がかりな基礎工事も不要となります。

——どのような経緯から開発されたのでしょうか。

白神

2016年、当社のオープンイノベーションの取り組みとして、社外から“電柱”の有効活用を目指す新たな事業アイデアを公募するアイデアソン「Dentune!!」を開催しました。そこには約100件のアイデアが集まり、そのなかから生まれたのが「休憩柱」と「電柱シェアサイクリングサービス」という2つのサービスでした。

それぞれ「アナログ機能を電柱に付与し憩いの場を提供する」「電柱の位置情報を活用した自転車のシェアリングサービス」というアイデアだったのですが、昨今は宅配事業の「再配達」が問題になっていることもあり、そうした市場ニーズを踏まえながら2つのアイデアを統合・変換し、本サービスの事業開発に至りました。

——サービス展開にあたっての、これまでの取り組みについて、お聞かせください。

白神

マンション向け宅配ボックスサービスの取り組みとして、まずは2018年11月1日〜2019年3月15日の間、宅配事業社様のご協力のもと、京都府精華町内の3カ所の賃貸マンションで電源供給が必要な電気施錠式の宅配ボックス(旧モデル)を用いた実証実験を実施しました。実証実験では大きな不具合もなく一定のサービス有用性を確認しています。

しかし同時にマンションオーナー様・管理会社様を対象としたアンケートと調査を行ったところ、既存の宅配ボックスサービスに対するそもそもお悩みとして「①コストを抑えたい」「②荷物放置等が起こると管理が面倒」「③屋内に設置スペースがない」などのお声が集まりました。そこでさらなる改良を加え、新モデルを開発しました。


ELTRESを選んだ理由

——現行の宅配ボックス(新モデル)について、改良のポイントとともに、その仕組み・構造を教えてください。

白神

大きなポイントは「電源供給が必要な電気施錠式」から「電源供給が不要な機会施錠式」としたことです。

具体的には、先述した「①コストを抑えたい」というニーズには機械施錠式とLPWAの採用、「②荷物放置等が起こると利用実績の管理が面倒」には通信機能の付帯、「③屋内に設置スペースがない」については防水に対応した屋外仕様といった機能を新たに備えています。

特に「②通信機能」にはLPWA通信規格としてELTRESを採用。これにより、荷物が届くと入居者様のスマホには“着荷通知”が届き、マンションオーナー様におかれましても荷物の預け入れ・取り出しの記録がモニタリングできるようになりました。

なお、宅配ボックス自体は当社を企画・運営・評価を主体としながら、河村電器産業様(製造・保守・運営等)・ラトックシステム様(通信装置の開発・製造)・日本ネットワークサポート様(電柱設置専用支持具の製造)と共同開発。ソニーネットワークコミュニケーションズ様には技術協力というかたちで、通信サービスの提供・技術アドバイスをいただいています。

——通信技術としてLPWAを採用した理由は?

白神

ここまで申し上げてきた通り、新モデルは「電源工事不要でコストが抑えられる」「場所を選ばず屋外設置も可能」といった特性を持ちます。そのため通信に関しても“電池で作動できる”くらいの低消費電力化が必要でした。

また、サービスご利用場所はマンション敷地内が中心となるため、都市部での通信安定性も求められます。その結果、低消費電力で長距離の通信をかなえるLPWAが必須でした。

他メーカーとの比較も行いましたが、ノイズの多い都市部でも高感度な通信を達成する「安定通信」、電池でも動作が可能な「低消費電力」の側面で、ELTRESはとても優れていました。事業者側で基地局を設置することなく“すぐにでも使える”という点も、理由としては大きかったです。

それから、インフラ事業者としてお客様の安心・安全をお届けするという当社使命を勘案しても、高品質で信頼性のある“SONYブランド”のLPWA通信規格は、お客様にとって納得のいくサービスであると考えました。

——実際に採用してみて、率直なご感想は?

白神

改良したサービスについては2020年12月14日から大阪市3カ所、堺市1カ所、岸和田市2カ所の計6カ所のマンション敷地内で新たな実証実験を始め、2021年3月31日までの実施を予定しています。

宅配ボックスという領域にELTRESを採用するのはまったく初めての試みで、新モデル開発後にはきちんと作動するか多少の不安はありましたが、これまで通信不具合は発生しておらず、問題なく入居者様・オーナー様にご利用いただいています。新規事業グループとしてELTRESの汎用性の高さを感じ取りました。


マンション・まちなか両輪で事業化へ

——本サービスについて、今後の展望は?

白神

本日ご紹介したのは“マンション向け”サービスの試みでしたが、他方で今回の成果・実績を横展開し「まちなか宅配ボックスサービス」の試験運用も始めています。こちらはその名前の通り“まちなか”にある電柱に設置する共用型の宅配ボックスサービスで、2020年10月19日〜2021年1月31日の間、精華町精華台において試行的にご利用いただいております。

当面我々が目指すべきは両サービスの事業化となります。マンション向け宅配ボックス、そしてまちなか宅配ボックスの開発により、これまで「宅配ボックスを設置したくても設置できなかった」というオーナー様へ新たな選択肢をご提供できると考えています。宅配ボックスの普及を後押しし、その価値が社会実装されれば、結果として再配達という問題を解決していけると考えています。

——最後に、新規事業グループとして、今後のIoTデバイス開発の展望についても教えてください。

白神

具体的な取り組みはこれからですが、昨今の流れとして、デジタル化・スマート化の時流は電気事業にとっても避けては通れないと考えています。特に当社の事業領域としては、送配電設備の保全・管理などがIoTとの親和性も高いと思いますので、我々も大きな時流に取り残されることなく、ELTRESの技術を活用した新サービス開発に積極的に取り組んでいきたいです。

(関西電力送配電(https://www.kansai-td.co.jp/) 企画部 新規事業グループ 前川将之さん、白神有貴さん)


最後に

ELTRESは安定通信・長距離伝送・低消費電力・高速移動体対応・GNSS標準搭載の特長を生かして様々な業界でご活用いただいております。

【活用例】
・物流:移動車輛の監視
・環境モニタリング:溜池の水位監視
・インフラ監視:街路灯の電力監視と設置位置管理
・農業・畜産:放牧牛のトラッキング
・人の安全みまもり:CO2センサで「3密」を検知
・スポーツトラッキング:アドベンチャーレースでのトラッキング
・IoTプラットフォーム:温湿度、不快指数、安全管理、物流管理、獣害被害対策、見守り等

「興味がある」から「実際に活用方法を検討している」までどの段階でも構いません、お客様のご希望に合わせてお話しさせていただきます。
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