照明設備点検・メンテナンス省力化に貢献

まちの車道・歩道を明るく照らし、市民の安全を確保する「道路照明」。東京都中央区に本社を置く岩崎電気株式会社(以下、岩崎電気)は、そんな道路照明の生産・出荷シェアで、国内トップをひた走ります。同社新技術開発部 応用技術開発課では、道路照明にまつわる新たな“価値”として、照明設備点検・メンテナンス省力化に貢献する「遠隔監視システム」を開発。なおシステムの通信機構にはELTRESを採用。同システムの開発経緯とともに、ELTRES選定の理由について、岩崎電気 新技術開発部 応用技術開発課の課長・松本裕之さん、豊福悟さん、杉尾匠史郎さんにお話をうかがいました。

岩崎電気は道路照明生産・出荷シェアトップ

——岩崎電気の主な事業内容を教えてください。

松本

岩崎電気は1944(昭和19)年設立の老舗メーカーです。「光テクノロジーを通して豊かな社会と環境を創造する」という企業理念のもと、照明事業(道路照明・施設用照明・産業用照明等)と光環境事業(紫外線殺菌・電子線照射等)の2つを軸に事業を展開しています。

——皆さまが在籍する新技術開発部 応用技術開発課の役割・業務内容について、お願いします。

松本

新たな技術を確立・導入し新商品・新事業を生み出す、いわば当社における「イノベーション部隊」です。特に当社は道路照明の生産・出荷シェアで国内トップに位置しておりますが、そうした堅調な実績をあげている既存事業に甘んじることなく、次世代の価値をつくりだしていこうと考えています。


「道路照明の遠隔監視システム」

——「道路照明の遠隔監視システム」の概要についてお聞かせください。

杉尾

「道路照明の遠隔監視システム」は、道路照明の点検業務・管理業務に変革をもたらすシステムです。通常、道路照明のポールには「自動点滅器」と呼ばれる機器が設置されています。センサーで照度を検知し「空が薄暗くなるとON」「明るくなるとOFF」に切り替えるスイッチのような機器だとイメージしてください。

当社が開発した遠隔監視システムは、その自動点滅器のなかに「電力測定機能」と「測位・通信機能」を内蔵させ、照明の位置情報と照明の稼働状況(電源電圧・消費電力・点灯時間・温度等)を情報取得アプリに送信。道路管理者様による照明設備点検・メンテナンス省力化に貢献します。

——システム導入までの流れを教えてください。

杉尾

既設の“分離型”自動点滅器の受け台から機器(自動点滅器の上部分のみ)を取り外し、当社開発の「監視機能付き自動点滅器」に置き換えます。ソケットで着脱するため、大がかりな工事は必要ありません。

交換が終われば、あとは情報取得アプリ「NodeViewer」をパソコンにインストールするだけ。すぐに測定データを確認できるようになります。ELTRESを使用しているので、通信のための基地局を新たに敷設するも必要もありません。

——なぜ道路照明に“遠隔監視”の機能が必要だったのでしょうか。

杉尾

まちなかには多くの道路照明が設置されています。特に東京のような大都市ともなれば、数千・数万の単位で道路照明が設置されているとも言われています。それだけの数にのぼれば、点検業者が人力・目視ですべての照明を“毎日”点検するのは不可能で、住民の方などの通報に頼らざるを得ないのが実情でした。

照明が故障したり不点灯になったりした瞬間から通報が入るまでには、どうしてもタイムラグが生じてしまいますし、台帳で管理していくこと自体にも大きな負担が伴います。本システムの遠隔監視によって「点灯しなくなったその瞬間、ただちに交換作業に向かえる=住民の安心・安全につながる」「リアルタイムかつデジタルのデータで管理がしやすくなる=道路管理者の業務効率の向上」という状態をご提供できると考えています。

——どのような経緯から「道路照明の遠隔監視システム」は開発されたのでしょうか。

杉尾

日頃、国土交通省や自治体といった私たちのお客様との対話のなかではたびたび「スマートシティー化」の話が持ち上がっていました。そうした背景があるなか、その方向性に沿うアイデアとして編み出されたのが道路照明の遠隔監視システムでした。

当初は基地局を自前で設置することをベースに開発を進めていたのですが、照明器具メーカーである当社にとってそれは現実的ではなく、結果としてすでに基地局が整備されているELTRESにたどり着いた次第です。


ELTRESを選んだ理由

——基地局の整備を必要としないことの他に、ELTRESを採用した理由は?

杉尾

道路照明の遠隔監視では、照明ポールの所在を把握できなければなりませんでした。ELTRESではGNSSが標準搭載され、すぐにでも位置情報で取得できました。

また、道路照明は都市にも地方にもくまなく設置されている公共設備のため、全国展開を狙っていくにあたっては長距離伝送をかなえてくれる特長も、システム要件として外せませんでした。

——他にもLPWAの通信規格があるなか、ELTRESが特に優れていた点は何ですか?

杉尾

ELTRESより先行している、ある有名なLPWA規格は、1つの基地局のカバーエリアが「30km程度」と言われていました。それに対してELTRESは「見通し100km以上」という伝送性能を持っていました。

また山間部での通信に大きな不安が残る通信規格と違い、ELTRESは今後も基地局の拡大が見込まれ、将来的に見ても遠隔監視の対象となる山間部に強い通信規格であると考えました。

・ELTRESの特長についてはこちら(https://eltres-iot.jp/blog/blog-001/)から

——実際にELTRES端末を作ってみて、どのような印象を抱かれていますか?

豊福

分離型の自動点滅器は外形的に取り換え前後でサイズが同じ。すでに“納まり”が決まっていました。限られたスペースに電力測定機能と測位・通信機能を備えたモジュールを新たに加えていくにあたり、ELTRESはデバイスの小型化・コンパクト化に対応し得る技術だと思いました。

——他に、開発における率直なご感想はありますか?

豊福

ELTRESのモジュールを開発に取り入れるプロセスでは、ソニーネットワークコミュニケーションズの技術者の方と数多くの打ち合わせを行いました。その際に思ったのは、技術へのこだわり・熱意にあふれていたことです。通信方式の細かな仕様であったり、データフォーマットの仕様決めであったり、本当に細かな部分にこだわり・熱意を感じ、私も1人のエンジニアとしてやりがいを感じました。


国交省・自治体の業務改善へ

——現在の進捗状況は?

杉尾

現在は当社の事業所内、および関連会社にご協力いただきながら、小規模エリアで実証実験を進めています。積雪の多いエリアでも通信テストを行っていますが、今のところ大きな問題は発生していません。国土交通省・自治体が主なお客様となりますが、今後の目標として2021年4月以降のリリースを目指しており、すでにお客様から好感触を得ています。

——本サービスが社会実装されることで、どのような社会的変化があるとお考えですか?

杉尾

特に昨今のコロナ禍では、ビジネスにおけるリモートワークが加速しましたが、道路照明の点検業務のように「現場に行かなければできない」という仕事は、いまだ現実として存在しています。いわゆる「エッセンシャルワーカー」の仕事全般にも言えるのかもしれませんが、そうした「現物を見ないと確認できない」ことがボトルネックとなり、なかなかリモート化に対応できないというケースは数多く見受けられるのではないでしょうか。

本システムによって「現場に出向くことなく、道路照明を遠隔監視できる」という価値が一般化し、点検作業者が現場を訪問する回数を減らせられれば、その領域の大きな変革につながっていくと考えています。

人口減少、高齢化、担い手不足など大きな社会問題を背景に、現場レベルで行う人力・目視での点検作業はすでに限界を迎えつつあると感じていますが、本システムの導入によって国交省・自治体様での業務改善を図ることができれば、結果的にその成果が行政サービスとして市民に還元されていくかもしれません。

——今後IoTデバイスの開発について、どのような展望をお持ちでしょうか?

杉尾

お客様へのヒアリングを行っていても、道路照明に限らず、河川や農業領域などインフラのモニタリングにはIoTが大きく貢献できると思っています。ELTRESは汎用性の高いテクノロジーですから、当社イノベーション部隊として新たな展開も考えていきたいです。

(岩崎電気株式会社(https://www.iwasaki.co.jp/)新技術開発部 応用技術開発課の課長・松本裕之さん、豊福悟さん、杉尾匠史郎さん)


最後に

ELTRESは安定通信・長距離伝送・低消費電力・高速移動体対応・GNSS標準搭載の特長を生かして様々な業界でご活用いただいております。

【活用例】
・物流:移動車輛の監視
・環境モニタリング:溜池の水位監視
・インフラ監視:街路灯の電力監視と設置位置管理
・農業・畜産:放牧牛のトラッキング
・人の安全みまもり:CO2センサで「3密」を検知
・スポーツトラッキング:アドベンチャーレースでのトラッキング
・IoTプラットフォーム:温湿度、不快指数、安全管理、物流管理、獣害被害対策、見守り等

「興味がある」から「実際に活用方法を検討している」までどの段階でも構いません、お客様のご希望に合わせてお話しさせていただきます。
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