地域の課題をIoTで解決 自治体向けELTRES活用事例ウェブセミナー
射水ケーブルネットワーク〈ウェブセミナーレポート〉

ELTRESは自治体での活用も拡がっています。本記事では、2021年6月10日(木)にソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が主催した「地域の課題をIoTで解決 自治体向けELTRES活用事例ウェブセミナー」の様子をレポート。ELTRESパートナー企業である射水ケーブルネットワーク株式会社より執行役員 事業本部営業企画部長の渡辺正樹さんをお招きし、ELTRESを活用した地域課題の解決事例をご紹介いただきました。


ケーブルテレビ局がIoTに取り組む理由

射水ケーブルネットワーク株式会社(以下、射水ケーブル)は富山県射水市に拠点を置くケーブルテレビ局です。同社はソニーネットワークコミュニケーションズ「ELTRES」を用い、雨量・水位・冠水の監視、積雪深観測、除雪車運行履歴、消雪装置の稼働監視などを目的としたソリューションを自治体向けに提供しています。

そもそもなぜケーブルテレビ局がIoTに取り組むのか、そこには2つの理由があるそうです。

理由①:既存事業が成熟期に入っている

同社が主力とする通信事業のエリアシェア(テレビ:約70%、ネット:約36%、電話:約40%)が高止まりを示すなか、既存インフラ(光ケーブル・無線基地)を利活用することで新たな事業を創出したい。

理由②:地域貢献(第三セクターとしての使命)

第三セクターの使命として地域貢献に注力したい。なかでも自治体のデジタル化が急速と進む最中、IoT技術を活用したスマートシティ化への支援は地域貢献につながる。取得データを市民生活に役立てるとともに、将来的にはアプリ・コミュニティチャンネルを通じて市民に向けた情報発信を行いたい。

(射水市・セミナー資料より)

2019年12月、射水市・夏野元志市長の定例記者会見で「IoTを活用した実証事業の開始」が発表されました。実施期間は2019年12月〜2021年3月です。

同市はこの実証事業に先駆け、市役所内にIoT利活用委員会(IoT利活用検討会議)を設置しました。そこでは市職員各課の若手・中堅で構成されたメンバーが日々の業務・生活のなかで感じる「地域課題」を持ち寄ったといいます。

さらに委員会は「喫緊の課題であること・住民の役に立つこと・技術的に問題がないこと」を判断基準に、74項目の地域課題を以下10項目に絞り込みました。

  1. 降雪雪量の把握
  2. 消雪施設の監視
  3. 除雪車位置情報の把握と除雪履歴の管理
  4. ため池情報の把握と伝達
  5. 降雨量、排水路の水位・流下量の観測
  6. 浸水状況の把握と事前通知
  7. 雨水施設の監視と事前通知
  8. 利用者数の把握(公共施設、公共交通、道路交通量)
  9. 観光入込数の把握
  10. 外国人の窓口対応(多言語対応)

上記1〜10を対象に、2019年12月から射水ケーブルによる各種実証事業がスタート。


射水市による実証実験の概要

2019年12月から始まった実証実験には、射水市役所屋上に設置されたELTRES通信基地局が使われました。各種センサーとELTRES端末で取得したデータは、基地局を経由してクラウドに蓄積。データ活用のためのプラットフォームやアプリケーションは、主には自社開発で用意しました。

2020年度(令和2年度)実証の主な対象業務は、以下の通りです(カッコ内は20年度の設置箇所)。

●積雪計測(10箇所)

PS柱(ケーブル局が持つ自営の電柱)に設置した積雪深センサーによる積雪計測。管理者は遠隔地から当該エリアの積雪状況を把握。除雪車出動を判断できる。

●消雪装置監視(7箇所)

路面の雪を溶かす撒水型消雪ポンプの稼働状況をセンサーで把握。ポンプの故障にもいち早く気づくことができる。

●除雪車位置情報(12台)

除雪車にELTRES端末を設置。除雪車の稼働状況・位置・経路等を把握する。

●排水路の水位・雨量計測(7箇所)

浸水被害が多発するエリアに水位センサーと雨量計を設置。豪雨時の浸水被害を防ぐとともに排水路の流下能力を監視できる。

●排水路/ため池の堆積物監視(4箇所/3箇所)

排水路・ため池に複数の水位センサーと雨量計を設置。水位差からゴミ・落ち葉などの堆積状況を把握する。

2021年3月までの実証事業は一旦終了しましたが、特に効果の高かった業務に対する追加実証および実装が決定しています。


ELTRESを選んだ理由

このたびの「スマートシティ化」に向けた取り組みにおいて、特に課題として持ち上がったのが「通信」にかかるコストの問題でした。

「近隣の富山市は居住エリアの98%をカバーする市内全域センサー網の配備を進めていますが、多額の初期費用・運用費用がかかると聞いていました。スモールスタートで始めている当プロジェクトではとても真似できません。そんなとき、コストとスピード感をまるまる解決してくれるELTRESに出会いました。

ELTRESは長距離・高感度・移動体対応で、何よりゲートウェイが不要です。基地局設置にかかる場所選定、使用許可の獲得など面倒な交渉・手続きも必要ありません。“上り”のみの通信であることが1つの特徴ですが、本案件では“下り”が必要なケースが少なく、その点でも問題がないと判断しました」(渡辺さん、以下同)

2021年度に向けて策定された予算は初期費用(センサー機器類・設置作業)と運用費用に割り当てられましたが「ランニングでの収益が見込まれており、だいたい3年弱で回収できるのでは」と渡辺さんは話します。


今後に向けての取り組み

2021年度中は「防災分野から子育て、産業分野への拡張」をテーマに掲げており、具体的には「保育園の登降園管理」「保育園 保育室の室温管理」「乳児の午睡チェック」「イノシシ罠管理システム」「海洋環境可視化支援システム」「アンダーパス冠水状況の把握」へのIoT適用を予定しているそうです。特に「後半3つの対象業務にはELTRESの適用を予定している」と渡辺さんは話します。

●イノシシ罠管理システム

イノシシ檻の管理者が現地を確認し、捕獲状況等を確認している。罠が作動したことをメール等で検知することにより見回り者の安全確保や作業効率化が図られ、コストの低減につながる。

●海洋環境可視化支援システム

漁場モニタリング(海水温・潮流)への適用。現在のモニタリングシステムが老朽化のため2021年度で提供終了するため、かねてより漁業関係者にとって大きな問題となっていた。

●アンダーパス冠水状況の把握

市内には市管理のアンダーパスが22箇所設置されており、豪雨時に冠水した場合、通行止めの措置をとる必要がある。実際の冠水状況は住民からの通報とパトロールでしか把握できないため、IoTを活用し、監視体制を強化したい。

(射水市・セミナー資料より)

20年度中にはうれしい反応もありました。

射水ケーブルが行った「積雪計測」に関して北陸地域のケーブル局から多数の引き合いがあり、2020年12月には仲間である9社の県内ケーブル局(富山県ケーブルテレビ協議会)で22箇所の共同広域実証実験が発表されたのです。エリアの至るところに点在する「PS柱」は「ケーブル局の強み」の1つ。その強みを活かせば積雪計測の対象エリアも富山県内で拡大していくでしょう。

本ウェブセミナーの最後に、渡辺さんは次のように総括しました。

「これまでは防災・減災対策への適用を基本方針としてきましたが、今後は子育て・漁業、農業、福祉、児童見守りといった領域にもIoTを拡張していきたいと考えています。『点』で始まった実証事業を『面』へと拡大させ、それぞれ領域から生まれるデータを有機的につなぎ合わせながら活用する。主役は市民の皆様です。最終的には、市民の利便性向上に資する事業へと発展させていくつもりです」

(射水ケーブルネットワーク株式会社 執行役員事業本部 営業企画部長 渡辺 正樹さん)

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