コイン電池1個で2週間以上の連続送信を実現
~低消費電力ELTRESで小型無線トラッカーの実現~

CR2032などのコイン電池は、どこでも手に入る小型、軽量、安価な電池として、様々な機器で使われています。一方で、コイン電池は、消費電流が数ミリアンペア以下の小さな機器に適した電池であり、消費電流の大きな機器で使用した場合は、電池を激しく消耗し、定格の電池容量を引き出せずに電池切れを起こしてしまうという問題があります。無線IoT端末では特に無線送信時に数十ミリアンペア以上の大きな電流を流しますので、電池の消耗に注意する必要があります。
今回の実験では、通信間隔を適切に設定することでELTRESの特徴である低消費電力を用いてコイン電池の容量を引き出し、2週間以上連続でのトラッカー動作を確認しました。

ELTRESモジュールの消費電流

出発点として、ELTRESモジュールCXM1501AGRでGNSSを常時動作、LPWAを3分間隔送信で使用して電池の持ちを図りました。結果として電池寿命は約3時間20分でした。電池容量利用率(取り出すことができた電流の総量と定格電池容量の割合)は14.6%でした。
そこで、ELTRESの超低消費電力モード(DeepSleep)を用いて、どこまで使用時間を伸ばせるかを実験しました。
コイン電池の容量利用率は(コイン電池にとっての)大電流を流すことで悪化しますが、ほとんど電流を取り出さない休止期間を設けることで回復が期待できます。
今回の評価で用いた動作モードの消費電流の概略は図1の通りです。

図1 試行したCXM1501AGRの消費電流の概略図

ELTRES送信は、ネットワーク管理情報(AR Burst)とユーザーデータ(Data Burst)が一組となっています。
これらの組の送信の間の時間をDeepSleep状態にします。
DeepSleep状態は消費電流が0.6uA(typ)と超低消費電流であるため、この期間にコイン電池の容量回復が期待できます。

※本実験ではCXM1501AGRのGNSS動作モード(POW_MODE)3を使用します。このモードは、ファームウェアバージョンRA2601以降でお使いいただけます。
消費電流についての詳細はCXM1501AGRのデータシート及びApplication Manualを参照ください。
ELTRES送信の前にDeepSleep状態から起床し、GNSSの受信を行います。送信に必要なパラメータを取得後、GNSSは速やかにスリープ状態に移行して電流消費を低減します。

実験条件

動作条件は、無線トラッカー動作を視野に入れて以下の通りとしました。

  • コイン電池は入手容易なCR2032(Φ20.0×3.2mm, 2.8g)を使用
  • 室温(25℃)
  • モジュール内蔵GNSSで取得した位置座標を送信
図2 ELFLEX-DS基板。Side AにGNSSアンテナ、Side BにCXM1501AGR

評価結果

ELTRESの送信を3分毎、10分毎、30分毎に行った結果を表1に示します。なお、容量利用率の計算にはメーカー公表の定格電池容量を用いています。

表1 連続動作時間と電池の容量利用率

3分毎の送信間隔では、33時間18分(1.39日)を実現し、連続動作させた場合と比較して使用時間を約10倍に、容量利用率を約3倍に伸ばすことができました。
また、30分毎の送信間隔では連続動作時間371時間30分(15.48日)を実現できました。この際の約67%の容量利用率はコイン電池によるLPWA送信としては高いものです。
以上のように、無線送信時に30mA以上の大きな電流を流したとしても、送信間隔を長く、DeepSleep時間を確保して十分な電池回復期間をあたえることで、入手容易なCR2032コイン電池で2週間以上の連続動作が実現できました。
また、以上で使用したA社の電池以外にも、現在市場で入手できた各メーカーのCR2032を用いた評価も行いました。
送信間隔を10分にした際の結果を表2に示します。

表2 各メーカーのCR2032による連続動作時間と容量利用率

公表している定格電池容量には大きな差はないもののメーカーによっては容量利用率に大きな差があることが確認できました。コイン電池を用いる場合は電池自身、性能の良いものを選択する必要があることが分かります。

結論

ELTRESモジュールCXM1501AGRの超低電流動作を活用するので、一般的なコイン電池CR2032でも30分に1回の無線トラッカー動作において2週間以上電池が持つことが確認できました。

最後に

ELTRESは安定通信・長距離伝送・低消費電力・高速移動体対応・GNSS標準搭載の特長を生かして様々な業界でご活用いただいております。

【活用例】
・物流:移動車輛の監視
・環境モニタリング:溜池の水位監視
・インフラ監視:街路灯の電力監視と設置位置管理
・農業・畜産:放牧牛のトラッキング
・人の安全みまもり:CO2センサで「3密」を検知
・スポーツトラッキング:アドベンチャーレースでのトラッキング
・IoTプラットフォーム:温湿度、不快指数、安全管理、物流管理、獣害被害対策、見守り等

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