「移動の進化」を後押し
スマートドライブとソニーグループが連携し、テレマティクスの市場拡大にチャレンジ

株式会社スマートドライブ

2013年に設立、主にクラウド車両管理システムを開発、提供しており、走行データを収集・解析することで事故のリスク低減をはじめ、法人企業での車両管理コストの削減など、車両にまつわる課題を解決するサービス展開をしている。
スマートドライブは、世界中の移動データを収集・解析して、事故のない社会、移動がより効率的で快適な社会をつくることを目標としています。
そのために、さまざまなセンサーデバイスを通じて収集・解析されたビッグデータを活用して、IoT時代の新たな移動にまつわるサービスを創造しています。

スマートドライブ Webサイト

取り組みリリース

ソニー独自のLPWA 通信規格「ELTRES」は、長距離安定通信、高速移動体対応、低消費電力の特長を備えています。
ELTRES IoTネットワークは、スマートドライブの走行データの収集・解析基盤である「Mobility Data Platform」と連携して、スマートドライブの走行データの取得・蓄積・活用が可能であり、ネットワークと移動データを活用したソリューション提供を開始しています。
今回は、ELTRES IoTネットワークの導入経緯や導入効果、今後の展望についてお話しを伺いました。

画像①
※画像左から紹介(敬称略)
ソニーネットワークコミュニケーションズ 長谷川
ソニーセミコンダクタソリューションズ 北園
スマートドライブ 元垣内
ソニーネットワークコミュニケーションズ 粟田
ソニーセミコンダクタソリューションズ 國近
ソニーセミコンダクタソリューションズ 中原
ソニーネットワークコミュニケーションズ 中村

ELTRESでメンテナンス整備の効率化

元垣内:

スマートドライブは「移動の進化を後押しする」というビジョンを掲げ、主に、車を利用されている企業様向けにクラウドベースでの車両管理サービスを開発・提供するフリートオペレーター事業と、リースやレンタカー等の車両等のアセットを活用した事業展開をされている企業様向けのサービスを開発・提供するアセットオーナー事業の2つの事業をしております。
フリートオペレーター事業並びにアセットオーナー事業共に、弊社のサービスを導入いただいている企業様では、取得したデータを活用し、車両稼働状況の分析や安全運転管理の改善など、さまざまな業務の効率化や改善が進んでいるのですが、
その中でもアセットオーナーであるリース会社やレンタカー会社で、メンテナンス整備に関する運用の非効率性を何とかしたいというお話しをしばしば伺っていました。
車両のメンテナンス整備は法定点検にプラスして三ヶ月ごとにメンテナンスをするといったサービスを行われていますが、実際には頻繁なメンテナンスがあまり必要ではない場合もあり、稼働実態を見ながら、本当に必要な場面でメンテナンスを行うことで、コスト削減を進めていきたいといった背景がありました。
また、業界全体としては整備士の労働力不足の課題なども取り沙汰される中、「必要なときに必要なタイミングで」メンテナンスを行いたいといった課題を、IoTやデータ活用によって解決ができないか求められていました。
私たちはもともと、LTE回線を利用して毎秒レベルで車両データを取得しながら、主にフリートオペレーターの企業様向けのフルパッケージの機能でのサービスを提供してていたため、メンテナンス整備の課題解決を実現するためには、通信回線や当社サービス自体のサーバーコストを含めたコスト感がマッチせず、これまでは実現が難しかったのです。
しかし、メンテナンス整備の課題に対して、必要なデータや解析の頻度、また、提供機能運の要件を絞り、通信回線やデータ取得に必要な機器をシンプルにすることで、手頃な価格で実現できるのではないかと考えているなかで、ELTRES IoTネットワークを知ったとき「これなら解決できるかもしれない!」と興味を持ち、現在に至ります。

北園:

ELTRESに興味をお持ちいただきありがとうございます。ELTRESの特長である「移動体に強い」「GNSSを標準装備」を活かすユースケースを探している中でスマートドライブ様のお話をお聞きしまして、これはELTRESがぴったりはまるケースなので、絶対に採用していただけるようにトッププライオリティでサポートすることにしました。
ところが、やはり課題は出て来るもので、一時期採用が危ぶまれたことがありました。

画像②
ソニーセミコンダクタソリューションズ 中原氏

ベンチャー企業のスピード感とソニーグループの総力を結集

北園:

我々が用意した実験機を使ってスマートドライブ様の既存アプリと組み合わせて評価していただいたのですが、ELTRESの送信は最短で1分に1回ですので、例えば時速60kmで移動している場合は1km間隔の位置情報になってしまいます。既存のLTE端末の軌跡と比べるとちょっとデータが少な過ぎるかなという話になりました。

元垣内:

ドライブレコーダーなどは基本的に毎秒の記録が行なえます。
その発想から最初は、「毎秒の記録がほしい」と考えていました。
しかし、詳細な運転評価が必要な場合には毎秒のデータが必要になりますが、稼働実態に合わせたメンテナンス整備の実施をするという目的の上では毎秒の運転評価記録は必ずしも必須ではありません。とは言え、ELTRES IoTネットワーク、ELTRESの最小通信間隔である1分ではさすがにデータが粗すぎます。
そこで、ELTRES IoTネットワークの強みを活かながらも、できるだけ細かくデータ取得を行いたいとオーダーをさせていただきました。

北園:

元垣内さんからいただいたオーダーは、目安として10秒間隔のデータでした。ELTRES IoTネットワークでは1分間隔で送信できるデータ量は128bitです。一つの位置情報を表すのに約40bit必要で、10秒間隔の位置情報を送るとなると1分間に6個の位置情報で約240bit必要になります。さてどうやって10秒間隔のデータを送ろうかと。

中原:

データを多く入れようとすると、位置情報の精度が粗くなってしまいます。
また、ペイロード128bitには、位置情報以外の情報も含まれるため、データ量のすべてを位置情報だけで使用することはできません。

北園:

仮に、10秒間隔の位置情報から移動距離を算出し、その移動距離から速度を算出するとした場合には、位置情報の精度が粗くなってしまうと、算出する速度の誤差が大きくなってしまい、使い物になりません 。
さてどうしよう、もう無理かなと思っていたとき、元垣内さんとの会話で「より細かい粒度で欲しい情報は位置情報より速度なんですよ」という言葉がキーワードとなり、ペイロードに位置情報を10秒間隔で詰め込むのは厳しくてもGNSSの速度情報を詰め込めばいいんだという話になりました。ここから中原さん達の開発チームに頑張ってもらいました。

中原:

ELTRESの通信モジュールは、GNSS(全球測位衛星システム)が標準搭載されているので、高精度な位置情報と同時に速度情報取得することができます。
速度情報は位置情報よりデータ量が少なくて済むため、10秒間隔の速度情報であれば128bit内に納められます。
開発では、GNSSの評価が行えるように環境を整備しているため、過去の評価データをうまく利用し、プロトタイプで速度情報を取得しながら、開発期間を短縮させながらも納得のいく結果が出たので、製品化に向けて粟田さんチームへ情報連携しました。

粟田:

製品化に向けたスケジュールで、実験の日程も迫っていました。
速度情報の追加は難しいことではありませんでしたが、本来は検証まで含め2~3ヶ月のスケジュールで行います。
しかし、過去に同機種を作っていた経験からノウハウも備えていたため、1ヶ月で実験も含めて完了するようにスケジュールを引き、取り組むことができました。

元垣内:

私たちは小さな世帯のベンチャー企業です、そのため業務範囲が複数職種にまたがるケースや意思決定のスピード感は大きな組織と比較したら一般論として早いと思っています。
そんな私たちから見ても、中原さんが担当されるR&Dから粟田さんが担当されている製品開発まで、非常にスピーディーに対応いただき、大変驚きました。

國近:

ソニーグループはさまざまな事業を展開しているので、各分野の知見、経験値が豊富にあります。
グループ各社と連携しスピード感を持ってプロジェクトに取り組むことで、検証を重ね品質を高めながらスケジュールに合わせた進行が行えました。

粟田:

今回の製品はオンダッシュ型の車載専用ELTRES通信端末です。
端末底面の両面テープで車両へ簡単に装着ができ、電源もUSBで給電することができるため、工事をせずに車両へ設置できます。
ダッシュボード上に設置することから、高温対応やサイズ感にも意識して製品開発を行っています。
また、Bluetooth®機能を搭載しているため、アルコールチェッカーや、タイヤ空気圧センサーといった車両に使われている各種センサーとの連携も行えます。

元垣内:

プロトタイプを初めて手にしたときから「ソニーらしさ」がデザインから感じました。
私たちもハードウェアを作ったりしているので、大変さは理解をしているのですが、かなりスピーディーに製品開発も進めていただき、感謝しています。

画像③
ソニーネットワークコミュニケーションズ 粟田氏
画像④
開発されたVehicle Smart Tracker For ELTRES

「移動の進化」を後押しする

元垣内:

今後、ELTRES IoTネットワークを活用した車載専用端末を、まずは足元のターゲットとして、リースやレンタカー車両へ標準搭載し、いわばコネクテッドカーの標準装備として展開していきたいと考えています。
現在は、例えば、メンテナンスに向けた取り組みを始め、工夫次第で比較的シンプルなデータで解決し得るテーマをベースにを進めていますが、将来的には速度情報を活用して運転評価を行い、車両を安全かつ大切に運転することで、事故を減らしながら、保険に活かしたり、さらには、車両アセットとしての残存価格を維持できるようにするなど、さらなる付加価値をつけていく取り組みに進化させていきしたいと考えています。
事故を防止し、車両の保護に努め、リース価格含むエンドユーザーが負担するコストも抑えながら、ひいては、自然な形で、サステナビリティにも貢献する世界につなげていきたいです。

中原:

IoTの活用においては、本当に必要な情報を必要な分だけ送ることが重要だと考えています。ELTRES IoTネットワークのペイロードは128 bitと少量ではありますが、本当に必要な情報を送ることを主眼において長距離伝送・高速移動体対応を可能にしました。
ですので、今回の取り組みでは「速度情報」に注目し、従来の「何でもデータを送ればいい」という考え方ではなく、「データを意識して送信すること」に共感しています。
このようなアプローチにより、業務効率化や稼働削減、ヒューマンエラーの防止、新たなビジネス機会の創出などに活用できると考えています。
今後もスマートドライブ様と取り組みを継続し、グルーバルで最も利用されるモビリティプラットフォームを目指すための力になりたいと思います。

國近:

通信技術のご提供に加えて、販売戦略面やサービス面でもソニーグループ全体の力を結集して引き続きサポートを差し上げたいと考えています。

中村:

ネットワーク回線の運用面からもスマートドライブ様をしっかりとサポートしていきたいと考えております。

元垣内:

「移動の進化を後押しする」というビジョンの実現に向けて、ELTRES IoTネットワークの特長を活かし、まずは、シンプルなデータで解決可能であり、なおかつ、車両へ標準搭載されるようなインパクトのあるテーマから取り組みを進め、さらなる付加価値に昇華させながら、「移動の進化」を少しでも早められるように事業展開をしていきたいと考えています。

画像⑤
スマートドライブ 元垣内氏

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