データ活用で猛暑を乗り切り実現したアスパラガスの販売額 前年対比7%増加、数値の見える化による精密な栽培管理を実現


ソニーはELTRES IoTネットワークサービスを活用したセンサー製品を活用して農作業の効率化・省人化を目指しています。

今回は、香川県高松市でアスパラガス「さぬきのめざめ」を栽培されている佐藤様、高松市の農業振興 担当者 三好様・高橋様に、「ELTRES IoTネットワーク」を使用してセンサーで取得する様々なデータをクラウドへ送信する製品を活用した農産物の生産取り組みについてお話しを伺いました。

ハウス内に設置した環境センサーで取得できるデータは、ハウス内と土壌内の温湿度、CO2、などです。これらのデータはELTRES回線を介してクラウドへ送信することができます。

アスパラガス栽培で直面した課題とスマート農業への挑戦

ー 佐藤様

私は2014年に一人で農業を始めました。
一人で全ての作業を行うことは決して楽ではありませんが、日々変化する自然と向き合い、作物が成長していく過程を見る喜びは別格です。
農業を始めたばかりの頃、売上の安定化を目指すために通年で取り組める農作物を探していた際にアスパラガスと出会いました。

他の農作物との兼ね合いから取り組みがしやすいと前々から考えていましたが、当時は書類作成や機械整備など、農作業以外の業務が増えてきたため、何らかの形で効率化を図る必要がありました。
そんな中で、高松市から「スマート農業」の提案を受け、それに乗じることにしました。

ー 高松市 農業振興担当者様

高松市では、2017年から「スマートシティたかまつ」の推進に注力しています。 様々な分野での取り組みが行われていますが、特に農業では、農業従事者の減少と高齢化という課題を抱えながら、「スマート農業」の普及を目指しています。

※スマートシティたかまつ 紹介ページ (別タブが開きます)

ー 佐藤様

最初に三好さんからお話を聞いたとき、とてもワクワクしたことを覚えています。
新しい技術に対する抵抗感は私にはありませんでしたが、伝統的な方法を用いている農業従事者の中には、新しい技術に対して抵抗感を持つ方もいると感じています。

しかし、オランダやドイツが取り組む農業のデータ活用事例から、従来の農作業方法を考慮しながら、農業経営の効率化や持続可能性を高める「スマート農業」には大きな可能性があると感じ、データを活用した農業に取り組むことを始めました。


取り組みを始めた初日から、アスパラガスの圃場に設置したセンサーからデータの取得が行え、これまでブラックボックス化していた様々な数値が可視化し、生産量に直結するデータの見える化ができたことで、「データ活用をしていない頃の自分に負けない」ではないですが、農業へ取り組む姿勢やモチベーションも変わっていったように思います。

取材をしている時点(2024年2月)でも、気温が20℃以上の日もあるため、アスパラガスの成長速度も変化し、芽が出始めている場所もあります。こんなことは農業を始めた10年の間でありませんでした。
地球の気候が変化し続けている現在、データをリアルタイムで確認しながら農業へ取り組む必要性があると強く感じています。

データに基づいた栽培管理、猛暑下でも出荷量減少を抑制

ー 佐藤様

データ活用を通じて、アスパラガスの品質向上に湿度が関係していることがわかりました。
高松市もデータ活用をサポートしてくれますが、品質向上に関係がある要因をデータから読み解くことが重要だと強く感じています。
2023年の猛暑は、収穫量の減少、品質の低下、農業経営への影響など、農業に大きな影響を与えました。
地域の農家は出荷量が例年と比較しても下がったといった話しを聞いていましたが、私のハウスでは2022年と比較して、2023年の出荷量は3%増加しました。
この結果は、データの取得を継続して続けたこと、取得したデータを振り返り、活用できたことが結果に繋がったと感じています。

個人的に感じる要因としては、これまで感覚で行っていたアスパラガスの生育を、センサーを通じて圃場内の環境が数値 で可視化され、データに基づき品質向上をするためハウス内温度や水の量の調整をこまめに行うことが可能になったからだと思います。

例えば、
「今日は雨が降っている」
「この前まで猛暑日だったのに、気温が下がってきている」

といった日々の変化に対して、可視化されたハウス内環境と自分の感覚との差を埋めるため、これまでよりもこまめに圃場に手を加え、トライアンドエラーを重ねていきました。
ある意味、答えを探すプロセスとなり、結果として圃場にとって最適解を見つけることにつながったと考えています。
これまでは経験と勘、天候の運に頼り、たとえ出荷量が下がっていたとしても原因を特定していませんでした。
しかし、数値が見える化されることで、振り返りや来年度以降の戦略を練ることができるようになるので、高松市のサポートを多くの農家が受けてほしいと思っています。

ー 高松市 農業振興担当者様

現在、高松市内の農業者の約9%がデータを活用しており、四国では約13%がデータを活用している統計があります。
データ活用に取り組む農家を増やし、地域全体の正確なデータ算出が行えることで、農家にとっては品質向上につながり、過去のデータを参考にすることで出荷量のばらつきも抑制できます。
高松市でも農家の高齢化は進んでいますが、新規就農者も着実に増えている状況です。
特に、比較的多い若手の新規就農者に対して、安定した出荷量と品質を確保するための支援策と継続的なサポートの一環として、データを活用した農業に取り組む支援を行っていきたいと考えています。

アスパラガス

農家の「点」を「線」で繋ぎ、高松市全体を盛り上げる

ー 佐藤様

高松市も農業取り組みを応援してくれているので、私たち農家は時間の成約がある中で、どれだけ生産量を向上させることができるかに強く焦点を当てています。
データ活用は効率性と生産性を最大限に高めるために必要なステップです。
こうした時代の変化や高松市の農業支援と相まって、地域の農業コミュニティにとってもELTRES端末のように新しい技術活用を取り入れることが、大きな 変化に向けた一歩を踏み出すキッカケになると思います。

ー 高松市 農業振興担当者様

私たちはサポートを通じて、市内の農家が現状では「点」になっている状況を、ELTRESの端末を活用することで、農家同士を「線」で繋ぎ合わせ、高松市全体の農業を盛り上げていきたいと考えています。

また、新規就農者を増やすために、次世代農業者や学生にスマート農業の理解を深めていくことが重要だと感じています。
現在は小学校でプログラミング教育が必修化されるなど、これまでよりも「デジタル」が密接にあると思っています。
教育の場を通じて、スマート農業に触れる機会を設けるなど、デジタルネイティブ な方々が、10年後、20年後に「農業に取り組んでみたい」と思ってもらうために、佐藤さんや地域の農業取り組みを積極的にサポートし、デジタル技術と農業が密接に関わっていることを知ってもらうことが重要だと考えています。

ー 佐藤様

いまは野菜を売るにしても生産者の顔が印刷されているなど、身体の中に入るものだからこそ、安全・安心が求められる中で、「データ」は安心感にも繋がると思っています。
ELTRESの端末を利用してみて、今後は一つのハウスに複数センサーの取り付けを行って、より詳細なデータを得たいと思っています。

いまは野菜を売るにしても生産者の顔が印刷されているなど、身体の中に入るものだからこそ、安全・安心が求められる中で、「データ」は安心感にも繋がると思っています。
ELTRESの端末を利用してみて、今後は一つのハウスに複数センサーの取り付けを行って、より詳細なデータを得たいと思っています。

そして、取得したデータをAIで分析し、「この時間帯は、この水の量がベスト」といったことが言い切れれば、農業に対する心理的なハードルも低くなり、就農される人が増えると思います。

今後も高松市からのサポートを受けながらデータを積極的に活用し、作物の品質を高め、さぬきのめざめの商品価値を上げ地域に就農者を増やすために取り組みを続けていきます。

ソニーのコメント

ELTRESネットワーク回線を活用したクラウド型データロガーを採用した佐藤様のインタビューから以下のお声をいただきました。

【佐藤様】

  • 圃場環境データを収集・分析し、栽培管理に役立てている
  • 猛暑でもデータ活用をすることで安定した出荷量を実現
  • データに基づいた栽培管理で、ハウス内環境や水やりを最適化
  • データの蓄積と分析から精度の高い農業経営が可能、スマートシティの実現に貢献

【高松市 農業振興担当者様】

  • 佐藤様の取り組みをモデルケースとして、市内農家へのスマート農業普及を目指す
  • 次世代農業者の育成、農業への理解促進

ソニーは今後もELTRESネットワーク回線を通じて農業での生産効率化、就農者不足に対応するソリューションの提供、貢献を続けて参ります。
今回のクラウド型データロガーはELTRESを使用してセンサーデータをクラウドに送信する製品です。
ソーラーパネル、蓄電池、防水ケースを一体化し、測定からクラウドへのデータ送信まで、本機のみで行うことが可能なため、農業関連の測定やインフラ監視など幅広い用途に活用いただけます。

こちらのクラウド型データロガーは、ELTRESパートナー企業であるスマートロジック株式会社から提供されています。

最後に

ELTRESは安定通信・長距離伝送・低消費電力・高速移動体対応・GNSS標準搭載の特長を生かして様々な業界でご活用いただいております。


【活用例】

  • 物流:移動車輛の監視
  • 環境モニタリング:溜池の水位監視
  • インフラ監視:街路灯の電力監視と設置位置管理
  • 農業・畜産:放牧牛のトラッキング
  • 人の安全みまもり:CO2センサで「3密」を検知
  • スポーツトラッキング:アドベンチャーレースでのトラッキング
  • IoTプラットフォーム:温湿度、不快指数、安全管理、物流管理、獣害被害対策、見守り等

「興味がある」から「実際に活用方法を検討している」までどの段階でも構いません、お客様のご希望に合わせてお話しさせていただきます。 まずはお問い合わせください。

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