スマート農業を「見て、触れて、試す」 ELTRES アグリテックフィールドで農業の未来を学ぶ

北海道北広島市に、ソニーのLPWA通信規格「ELTRES」を活用したスマート農業の検証の場、そしてスマート農業に取り組む方々のコミュニケーションを推進する施設として「ELTRES アグリテックフィールド」が誕生しました。

2018年に設立されたスマート農業共同体(通称:SAc)の活動に賛同したサングリン太陽園、越浦パイプ、ソニーセミコンダクターソリューションズとソニーネットワークコミュニケーションズの4社が連携し、より具体的で実践的スマート農業の実現を目指します。
この施設では、「TECHNOLOGY FARM 西の里」の敷地内に建てたビニールハウスに、様々なセンサーを設置したり、また実際のセンサーから得られたデータの可視化や分析などを行うことができます。

例えば、気温や湿度、土の中の水分量などの環境情報を見ることができるため、いつ何をすればいいかが、明確になります。また、ハウスの環境や水やりが作物の生育に対しどのように影響するかをデータで確認できるため、農家の皆様にとって非常に有益な情報を得られます。

「ELTRES アグリテックフィールド」では、ソリューションを紹介するだけでなく、実際に端末の設置などのスマート農業を実際に導入した場合の環境を提供し、農家の皆様が最新の技術や方法を「見て、触れて、試す」ことができる、未来の農業を学ぶ場を目指しています。
具体的な話について、「ELTRES アグリテックフィールド」に携わる方々にお伺いしました。

スマート農業共同体 SAc Webサイト

プレスリリース | スマート農業を加速する4社共同の実証実験施設 「ELTRESアグリテックフィールド」を北海道にてオープン ~ソニーのIoT通信技術で農作物のデータを取得し利活用、農業技術の発展を支援~

参加者

サングリン太陽園:白川氏・秋元氏・白石氏

ソニーセミコンダクターソリューションズともに、「ELTRES アグリテックフィールド」プロジェクトを推進する役割を担う。
北日本スカイテックの施設「TECHNOLOGY FARM 西の里」での設置場所をご提供いただく。
また「ELTRES アグリテックフィールド」の管理、運営、視察プログラムの運営を行い、ソリューションの販売を担う。

越浦パイプ:佐藤氏

「ELTRES アグリテックフィールド」で使われるビニールハウス、設置業務を担当し、ハウス環境のサポートを提供する。

ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、ソニーセミコンダクタ):國近氏・マイケル氏

サングリン太陽園ともに、「ELTRES アグリテックフィールド」プロジェクトの推進を行う。
LPWA通信規格「ELTRES」及びELTRES関連ソリューションの技術サポートを担当する。

レスターエレクトロニクス(以下、レスター):白崎氏

「ELTRES アグリテックフィールド」に関連機材の購買・設置のサポートおよびレクチャーを担当する。

※本文中 敬称略


「ELTRES アグリテックフィールド」の設立の背景と体験できること

「ELTRES アグリテックフィールド」のプロジェクトは、どのような経緯で立ち上がったのでしょうか?

サングリン太陽園 白川:

サングリン太陽園のグループ会社である北日本スカイテック株式会社では、2018年にスマート農業の情報発信拠点として、「TECHNOLOGY FARM 西の里」を設立し、同時にSAcを立ち上げました。
SAcは、企業、団体、生産者、消費者が連携し、情報交換や実証実験などを通じて、農業のICT化・6次産業化を推進しています。
今回、SAcの活動に賛同したサングリン太陽園、越浦パイプ、ソニーと共同で、「ELTRES アグリテックフィールド」を設立し、具体的な取り組みを開始しました。

ソニーセミコンダクタ 國近:

ソニーは2017年からELTRESの提供を開始しましたが、農業分野での活用には大きな可能性を感じながらも、知見が不足していました。
そこで、SAcに加入して連携を深める中で、今回のプロジェクトが実現しました。

ソニーセミコンダクタ マイケル:

農家の皆様にELTRESやデータや通信のメリットを実感していただくためには、実際に我々の農業ソリューションを試せる機会が不可欠だと考えました。そこで、「ELTRES アグリテックフィールド」を構想し、実現に至りました。

サングリン太陽園 白川:

SAcとしても、北海道におけるスマート農業推進の役割を担っていたため、國近さんやマイケルさんの考えと合致しました。
この施設でスマート農業を体験できる仕組みができたことは、今後の展開にとって非常に楽しみです。

ELTRES アグリテックフィールド 全景
ELTRES アグリテックフィールド 全景

高強度で雪解けにも耐えられるビニールハウス

具体的には、どのような体験ができるのでしょうか?

サングリン太陽園 白川:

「TECHNOLOGY FARM 西の里」では、農業資材や種苗の試験ができる広大な試験圃場を併設しており、北海道の気候風土に適した作物の品種開発や、新しい農業資材、先進技術を利用した生産、検証を行っています。
また、ドローンの研修・整備拠点としても機能しており、操縦体験も可能です。
スマート農業に関する最先端の技術を体験できる施設になっています。

ソニーセミコンダクタ マイケル:

「ELTRES アグリテックフィールド」では、ハウス栽培やセンサーデータの可視化を実際の作物が育つ様子と併せてご覧いただけます。
例えば、気温や水やりが作物の生育へどのように影響するかをデータで確認できるため、農家の皆様にとって非常に有益な情報を得られる場所になると思います。

ソニーセミコンダクタ 國近:

単にソリューションを紹介するだけでなく、実際にスマート農業を体験できる環境を提供することで、少し先の未来を学べる場を提供したいと考えています。
具体的な活用方法や取り組み方をお伝えすることで、農家の皆様が最新の技術や方法を実際に手に取って試すことができ、日々の業務にどのように取り入れるかを具体的にイメージできるようになることを目指しています。

サングリン太陽園 白川氏
サングリン太陽園 白川氏

今回建てたビニールハウスの構造について教えてください。

越浦パイプ 佐藤:

ハウスの骨組みには、高強度で雪解けにも耐えられる角パイプを採用し、張りを持たせた構造にしました。
これにより、長期的な稼働を見据えた丈夫なハウスを実現しています。

サングリン太陽園 白川:

ハウス内は4区画に分け、それぞれの区画にセンサーを設置して、温湿度、CO2濃度、日射量、土壌水分などの情報を測定しています。これらのセンサー情報を日々確認しながら、作業員が作物を育てています。

サングリン太陽園 秋元:

作物の生育状況を可視化できるようになったことで、特に「水分管理」に大きな変化を感じています。
数値化されたデータで水分量を把握できるため、いつ冠水を行うべきかを的確に判断できるようになりました。
以前は、作物が萎れてから水をあげていましたが、作物にストレスを与えないタイミングで水やりが可能になりました。

サングリン太陽園 白石:

スマートフォンやパソコンから、離れた場所でもハウスのデータを確認できるため、急な気温の変化などがあっても安心です。
数値を見て状況を判断できるので、非常に便利です。

レスター 白崎:

これまで、データを閲覧するシステムの使い勝手を向上させるために、情報階層の改善などを繰り返し行ってきました。
今後も取り組みを通じて、関係者の方々や農家の皆様、指導員の方々からの意見を収集し、ハード・ソフト両面から改善を進めていきます。
利用者の目線に立ち、出来るだけ敷居を下げて取り組んでいただけることを目指しています。

越浦パイプ 佐藤氏
越浦パイプ 佐藤氏

簡単に設置できるセンサーや端末

センサー設置は簡単に行えますか?

サングリン太陽園 秋元:

センサーには取り付け金具が付いているので、設置は1分もかからず非常に簡単です。
計測したい場所へピンポイントに設置できるなど、農家目線で作られていると感じています。

レスター 白崎:

実は、当初センサーには取り付け金具が付いていませんでした。ハウスの上から紐で吊るしたり、平らな場所に直接置いたりしていましたが、取り付けに時間がかかったり、移動が難しかったりしました。
そこで、利用者の使いやすさを考え、取り付け金具を付けることで、設置場所も自由に選べるようにしました。

ソニーセミコンダクタ 國近:

センサー設置が農家の皆様にとって手間になってしまうと、スマート農業の普及が進みません。
日々の改善を通して設置のハードルを下げ、現場目線での取り組みや実験を進めていきたいと考えています。

センサーを設置する様子
センサーを設置する様子

本プロジェクトに対する意気込みをお願いします。

サングリン太陽園 白川:

私たちの目標はずっと変わっていません。
様々なバックグラウンドを持つ人々が集まり、交流し、新しいアイデアが生まれるような場所にしたいと考えています。
この拠点を通じて、北海道の農業を盛り上げ、その輪を全国に広げていきたいと考えています。
そうすることで、1次産業全体が活性化し、日本の農業がさらに発展していくと信じています。
皆様のお力をお借りしながら、目標に向かって進んでいきたいと思っています。

サングリン太陽園 白石:

農家の皆様が抱えている課題は、地域や人によって本当に様々だと思います。
個人としての最終目標は、それぞれのお客様に対して「何ができるのか」という問いに、具体的な解決策を提示できるようになることです。そのためには、様々な提案をしていく必要があります。

そして、いただいたフィードバックを真摯に受け止め、改善を重ねていくことが重要だと考えています。
「ELTRES アグリテックフィールド」という恵まれた環境を最大限に活用し、新しい技術や手法に積極的に取り組むことで、農家の皆様に様々な選択肢を提供し、「これなら私の農園に合いそうだ」という発見をしていただきたいと思っています。

サングリン太陽園 秋元:

この拠点を活用して北海道から情報を発信し、データの見える化を通じてコスト削減に貢献したいと考えています。
例えば、湿度が高くなりすぎて病気のリスクが高まっている場合、それをデータで把握し、適切な対策を講じることで、農薬の使用量を減らし、コストを削減することができます。
そして、実証実験で得られた知見を農家の皆様だけでなく、学生たちにも共有していきたいと考えています。
そうすることで、スマート農業の普及を促進し、農業全体の活性化に貢献できると信じています。

越浦パイプ 佐藤:

スマート農業は、農作業の負担を軽減し、生産性を向上させるためのものです。しかし、導入したもののうまく活用できず、かえって負担が増えてしまったというケースもあるようです。
私たちは、そのようなことが起こらないよう、農家の皆様に寄り添い、本当に役立つソリューションを提供していきたいと考えています。スマート農業を導入することで、農作業が楽になり、生産量が増え、そして何より農業が楽しくなる未来を目指します。

レスター 白崎:

「安くて本当に使えるIoT」の実現を目指し、農家の皆様にとって本当に役立つ、手軽に導入できるIoTソリューションを提供します。
全国の農家さんを訪問する中で、スマート農業を始めたいという気持ちがあっても、その一歩を踏み出すきっかけがないという声を多く聞きました。
そこで、私たちは導入のハードルを下げ、継続して利用していただけるような仕組み作りに取り組んでいきたいと考えています。
データ活用によって利用する皆様にとってどのようなメリットがあるのか、今回のプロジェクトを通じて具体的に解明していきたいと思っています。

ソニーセミコンダクタ マイケル:

農家の皆様のニーズは、例えば出荷量を増やし、作物の品質を向上させることですが、それらを具体的にどのように実現するかは難しい課題です。それぞれの作物ごとに、どのような方法で出荷量を増やし、品質を向上させるのか、データに基づいた具体的な提案をしていきたいと考えています。
しかし、私たちにはまだ農業の経験が浅く、知らないことも多いです。

そこで、「ELTRES アグリテックフィールド」を通じて、皆様と一緒に経験を積み重ねていきたいと考えています。
手を携え、「これは使いやすかった」「これは良かった」「これはちょっとイマイチだった」といった率直な意見を伺い、時には「こんな機能があればいいのに」という新たな要望をいただくことで、私たちも気づかなかったようなニーズを把握し、具体的な機器の改善や提案につなげていきたいと考えています。
取り組みを通じて、本当に役立つソリューションを開発し、農業の発展に貢献していきたいと強く思っています。

ソニーセミコンダクタ 國近:

農家の皆様はスマート農業を始めたいという意欲は高いのですが、最初の一歩が踏み出せないという現状があります。
私たちは、より多くの方に手軽に導入いただけるよう、低価格で使いやすいソリューションを提供していきたいと考えています。

まだ、私たちは農業に関する知識がまだ十分ではありません。
農家の皆様と一緒に、現場で学びながら、本当に役立つソリューションを開発していきたいと考えています。
そのためには、現場の声を直接聞き、農家の皆様が抱える課題を深く理解することが重要です。
これからも、現場に足を運び、農家の皆様と共に農業の発展に貢献できるよう、積極的に取り組んでいきたいと思っています。

ハウスで収穫されたミニトマトを試食
ハウスで収穫されたミニトマトを試食
 ELTRES アグリテックフィールド ハウスの様子
ELTRES アグリテックフィールド ハウスの様子

最後に、「SAc事務局」よりコメントを紹介

最後にSAc事務局も務めております、白川さまより、SAcとしてのコメントを頂戴しております。

当会は、北海道農業の持続的発展に向けてスマート農業や新技術などを北海道農業の現場へ実装していくことを目的としております。
ELTRES アグリテックフィールドが、農業者、企業・団体、消費者がつながる場として、会のみなさんと一緒に盛り上げていきたいです。

SAc事務局 白川 努

TECHNOLOGY FARM 西の里 紹介

住所

〒061-1102
北海道北広島市西の里308-1
※施設内にELTRES アグリテックフィールドのハウスがございます。

アクセス

電車 JR北海道函館本線 北広島駅 バスで約20分
車 道央自動車道 北広島ICから約10分

TECHNOLOGY FARM 西の里

お問い合わせ

お問い合わせ内容によっては、ご回答までにお時間をいただくことがございます。
何とぞご了承ください。