伝統の椎茸栽培をデジタル技術で進化、熊本県の新たな取り組み

熊本県は、阿蘇山や球磨川など豊かな自然に恵まれた環境の中で、全国有数の原木椎茸の産地として発展してきました。しかし近年、高齢化や担い手不足といった課題に直面しています。このような状況を打開するため、県内の原木椎茸農家ではデジタル技術を活用した新たな取り組みが進められています。
その一つが、ELTRES IoTネットワーク回線を利用した環境センサーです。
この環境センサーは、温度、湿度、気圧、降水などの情報をリアルタイムで取得し、生産者が情報を把握し、適切なアクションを行うことで品質向上と収量増加を支援します。

今回は原木椎茸農家の課題に対して一緒に取り組みを行う、原木椎茸農家の石原様、熊本県椎茸農業協同組合の田邊様・戸次様、熊本県庁の鳥居様にお話を伺いました。

熊本県における原木椎茸栽培の現状

ー 熊本県椎茸農業協同組合 田邊様

熊本県は全国3位の原木椎茸の生産量を誇る地域です。
原木椎茸とは、伐採した木に種菌を植え付け、自然に近い環境で栽培した椎茸のことです。
栽培は種菌の植え付けから収穫まで、1年以上もの時間と手間がかかります。

熊本県では約400名の生産者が椎茸栽培に従事していますが、高齢化が進み、担い手不足が深刻化しています。

熊本県椎茸農業協同組合 田邉氏
熊本県椎茸農業協同組合 田邉氏

ー 椎茸農家 石原様

原木椎茸の栽培においては収穫時期の予測は非常に難しいという課題があります。
原木椎茸の発生は、気温、湿度、気圧などの様々な環境要因に影響され、最適な収穫タイミングは限られています。

収穫が遅れると、椎茸の品質が低下し、商品価値が下がってしまいます。
一方で、早すぎる収穫は椎茸の成長を阻害し、収量に影響を与えます。

このため、生産者は常に椎茸の生育状況を注意深く観察し、経験と勘を頼りに収穫時期を判断しています。

しかし、高齢化と担い手不足により、収穫時期に十分な人出を確保することが難しくなってきています。

椎茸農家 石原氏
椎茸農家 石原氏

環境に優しく、効率的な椎茸栽培

ー 熊本県庁 鳥居様

熊本県では、これらの課題を解決し、原木椎茸産業の持続的な発展を図るため、デジタル技術を活用した取り組みを推進しています。

具体的には、ELTRESを用いた環境センサーを導入してデータ取得を開始しました。
椎茸の生育環境をモニタリングし、生産性向上を目指しています。

熊本県庁 鳥居氏
熊本県庁 鳥居氏

伝統的な知恵と科学的根拠の融合

ー 椎茸農家 石原様

これまで、椎茸の発生には気温と湿度が最も重要な要素だと考えられてきました。
しかし、センサーで取得したデータの分析から、「気圧の変化」が椎茸の発生に大きな影響を与えていることが判明しました。

例えば、台風などで気圧が大きく変化するタイミングで、椎茸の発生量が増加する傾向が見られました。

これは、気圧の変化が椎茸に刺激を与え、成長を促進している可能性を示唆しています。

ー 熊本県椎茸農業協同組合 田邊様

古くから、椎茸の発生は気圧の変化に関連があるという言い伝えがありました。
例えば、雷が鳴ると椎茸がよく発生するという言い伝えは、気圧の急激な変化が椎茸の発生を促すという経験則に基づいています。

また、雨が降っているときに椎茸へ水をかけると、発生が促進されるとされていました。
これは、気圧の低下と湿度の上昇が椎茸の生育に好ましい環境を作り出すという経験的な知恵から生まれたものです。

原木栽培のサイクル図
原木栽培のサイクル図

ー 熊本県椎茸農業協同組合 戸次様

デジタル技術の導入により、気圧の変化が椎茸の発生に大きな影響を与えていることが明らかになりました。

これは従来の経験則を科学的に裏付けるものであり、より精密な生産管理の実現につながる可能性を秘めています。

今後は、気圧の変化と椎茸発生のメカニズムをさらに解明し、より安定的な生産体制の確立を目指します。

デジタル技術が拓く椎茸栽培の新時代

ー 椎茸農家 石原様

環境センサーを導入したことにより、これまでの経験と勘に頼っていた椎茸栽培から、データに基づいた科学的な栽培が可能になりました。
センサーからのリアルタイム通知で収穫の最適なタイミングを把握できるようになり、品質と収量の向上の実現を目指しています。 この技術を地域全体に広めることで、椎茸栽培の安定化、そして収益向上に貢献し、地域経済の活性化にも貢献したいと考えています。

環境センサーを確認する石原氏
環境センサーを確認する石原氏

ー 熊本県椎茸農業協同組合 田邊様

当組合では、組合員への研修や情報提供を通じて、デジタル技術の積極的な普及を進めています。
高齢化や担い手不足といった課題に直面する中、デジタル技術は椎茸産業の未来を担う重要なツールになると確信しています。

ー 熊本県庁 鳥居様

熊本県では、熊本県椎茸農業協同組合、地域農家の皆様との連携を強化し、椎茸産業の振興に注力していきます。
デジタル技術を活用することで、生産性と品質の向上、担い手不足の解消を実現し、持続可能な椎茸産業の構築を目指します。 そして、熊本県産椎茸のブランド価値を高め、全国そして世界へと発信していきます。

原木椎茸
原木椎茸

ELTRESのコメント

ELTRESネットワーク回線を利用した環境センサーを活用する熊本県の椎茸農家様のインタビューから以下のお声をいただきました。

【効果】

  • 環境センサー導入により、適切な収穫時期を把握し、椎茸の品質向上と収量増加を実現。
  • 気圧の変化が椎茸の発生に大きく影響していることをデータで確認し、従来の経験則を裏付けた。
  • データに基づいた精密な生産管理により、より安定的な椎茸生産体制の構築を目指す。

今後の展望

  • 生育予測や病害虫発生予測など、より高度な分析機能の開発。
  • 組合員への研修や情報提供を通じて、デジタル技術の普及を促進。
  • 生産性向上、品質向上、担い手不足の解消を目指し、持続可能な椎茸産業を構築。

ソニーは今後もELTRESネットワーク回線を通じて農業での生産効率化、就農者不足に対応するソリューションの提供、貢献を続けて参ります。
今回の環境センサーはELTRESを使用して取得したデータを送信する製品です。
測定からデータ送信まで、本機のみで行うことが可能なため、農業関連の測定やインフラ監視など幅広い用途に活用いただけます。
こちらの環境センサーは、ELTRESパートナー企業である株式会社ライズナーから提供されています。

環境センサー

最後に

ELTRESは安定通信・長距離伝送・低消費電力・高速移動体対応・GNSS標準搭載の特長を生かして様々な業界でご活用いただいております。

【活用例】

  • 物流:移動車輛の監視
  • 環境モニタリング:溜池の水位監視
  • インフラ監視:街路灯の電力監視と設置位置管理
  • 農業・畜産:放牧牛のトラッキング
  • 人の安全みまもり:CO2センサーで「3密」を検知
  • スポーツトラッキング:アドベンチャーレースでのトラッキング
  • IoTプラットフォーム:温湿度、不快指数、安全管理、物流管理、獣害被害対策、見守り等

「興味がある」から「実際に活用方法を検討している」までどの段階でも構いません、お客様のご希望に合わせてお話しさせていただきます。 まずはお問い合わせください。

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