LPWAとは?IoTに欠かせない無線通信規格を理解しよう!

現在使用されている無線通信規格として、4G、LTE、Wi-Fi、Bluetoothなどがありますがコストや消費電力の課題があり長時間使用するというニーズを満たすことは難しい状況でした。現在の課題を解決するために生まれた新しい無線通信規格が「LPWA」です。

そんなLPWAとはどんな通信規格で、他の通信方式とはどんな違いがあるのか、どんな場面で活用できるのか、この記事ではわかりやすく解説しています。これからIoTに取り組む人はもちろん、IoTを始めたばかりの人もぜひ参考にしてください。

IoTについてもっと基本的なところから知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
「IoTのメリット、デメリット、活用方法を解説」


LPWAを活用したIoTソリューションについて、「興味がある」から「実際に活用方法を検討している」など、どのような内容でも結構です。まずはお気軽にお問い合わせください。


LPWAの概要と特徴

LPWAとは「Low Power Wide Area」の略で、日本では「低消費電力広域通信」などと訳されます。 PWAと同義語として、LPWAN (Low-Power Wide-Area Network) と呼ばれる場合もあります。

日本国内ではサブギガ帯と呼ばれる920MHz帯を使用します。空中線電力は20mWで、通常の携帯電話の基地局の32Wと比べ、1,600分の1と非常に省電力となっています。

長距離通信を低消費電力で行える無線通信技術という魅力がある新しい通信規格で、従来の通信方式では利用できなかった山岳部などに、低消費電力で通信可能ということで活用が注目を浴びています。


LPWAと他通信規格の比較

現在の通信方式の中で、長距離に対応している無線規格の3G/LTEよりも通信距離は長く広いエリアを網羅可能なのがLPWA。 通信速度は、その分遅くLTE/3G/Wi-Fiなどの方が速いです。画像を送るというより、文字で情報をやりとりしたいという時に都合の良い通信規格がLPWAです。

LPWAのメリット

電力の消費が少ない(低消費電力)

LPWAのメリットの1つが、コイン電池1個で長期間(数年間)動作する省電力性です。IoTによる取り組みとして多いのが「データの見える化」です。集めた情報をもとに課題やリスクを洗い出し、業務効率化や働き方改善、災害対策などに活用したいと考えている事業者の方は多いでしょう。

そのためには、データを長期間収集する必要があります。その際、IoTデバイスに頻繁な電池交換・充電の手間がかかってはデータの収集に時間がかかり過ぎてしまいます。

その点、LPWA対応のIoTデバイスであれば、電池で数年動作するうえ、電源の確保も不要です。そのため設置環境の自由度も高く、郊外や人の頻繁な出入りが困難な河川、山岳部などでの利用も増えています。

通信距離が広範囲(長距離通信)

LPWAのもう1つの特徴が、通信距離の広さです。LPWAの規格の1つである「ELTRES(エルトレス)」の場合、見通し100km以上の伝送性能があります。富士山の五合目に受信機を設置した実証実験では、和歌山県までの通信を確認できました。

1つの受信機で100km以上の通信が可能であることから、大規模な工場や農場、河川、山間部など、広いエリアでのIoT化がLTEや4Gを使った場合に比べて安価で実現できます。

LPWAのデメリット

LPWAのデメリットとして挙げられるのが「通信速度の遅さ」です。LPWAは微弱な電波のため、一度に通信できるデータ容量は少なく、画像や動画データの送信には不向きと言われています。

ですが、これは私たちが普段スマートフォンで利用しているLTEや4Gなどの通信方式と比較した場合のデメリットです。温度・湿度・照度などの各センサーの数値や、GPSの位置情報などは、シンプルで容量の軽いデータであるため、このようなデータを扱う場合は、低コスト・低消費電力・長距離通信の点からLPWAが最適と言えるでしょう。


LPWAの種類と違い

LPWAは、大きく「アンライセンス系」と「ライセンス系」の2つに分かれています。それぞれどんな違いがあるか紹介していきます。

アンライセンスバンド(非セルラー系)

アンライセンス系LPWAは、非セルラーLPWAとも呼ばれており無線局免許がなくても利用できるLPWAです。産業・科学・医療業界の利用を期待して、国際電気通信連合(ITU)が割り当てた免許なしで使える電波帯域です。規定内の出力・送信なら自由に利用できるので、LPWAで早い段階から使用されてきました。

代表的なアンライセンスバンド
・sigfox:sigfox社
・LoRaWAN:オープン標準
・Wi-SUN:米Wi-SUNアライアンス
・ZETA:英ZiFiSense社

ライセンスバンド(セルラー系)

ライセンス系LPWAとは、大手通信事業者が国から免許を受けてLTEの周波数帯を使用しているLPWAです。既存の携帯電話帯域、セルラー通信を用いる規格のためセルラー系とも呼ばれておりアンライセンス系と比較するとコストが高く免許が必要という特徴があります。

代表的なライセンスバンド
・LTE-M(LTE for Machine-type-communication、旧eMTC)
・NB-IoT(Narrow Band IoT)


LPWAを活用したIoTソリューションについて、「興味がある」から「実際に活用方法を検討している」など、どのような内容でも結構です。まずはお気軽にお問い合わせください。


ソニーのLPWA「ELTRES」

「ELTRES」はソニーオリジナルの無線通信規格です。 「長距離安定通信」「高速移動体通信」「低消費電力」の特長を生かし、センサー等の対応製品・モジュールで取得した情報を広範囲に効率よく収集することができ、さまざまな利用シーンでご利用いただけます。

他のLPWAと比較したELTRESの魅力

ELTRESは、他規格のLPWAとは違うチャネルを使用しており、同じチャネル使用で起こる混信除去アルゴリズムの適応や高周波部分で混信を起こしにくい回路を採用しています。そのため都市部などのノイズの多いエリアでも安定した通信が可能です。

また、長距離通信距離や時速100kmで走行中の車両からも通信が可能となっております。1日1回程度のデータ送信ならばコイン電池1個で約10年動く設計なので低コストで利用できる点も魅力的の一つです。

セキュリティで重要な暗号化技術も、ソニーの高度な技術によるもので安全性の高いLPWAとなっています。


ELTRESの活用事例

ここまでLPWAの特徴や他通信規格との違い、メリット・デメリットについてご紹介してきました。下記は、実際にどのような業種で活用されているのか、もしくはLPWAの活用が適した利用シーンについてご紹介します。

  • 物流:移動車輌の監視
  • 環境モニタリング:ため池の水位監視
  • インフラ監視:街路灯の電力監視と設置位置情報
  • 農業・畜産:放牧牛のトラッキング
  • 人の安全みまもり:CO2センサーで「3密」を検知
  • スポーツトラッキング:アドベンチャーレースでのトラッキング
  • IoTプラットフォーム:温湿度、不快指数、安全管理、物流管理、獣害被害対策、見守り等

上記の業種や利用シーンごとに、当社が提供するLPWA「ELTRES」の活用事例や「ELTRES」を活用したソリューションや対応製品をご紹介しておりますので、詳しくは下記のURLからご覧ください。

ELTRES IoTソリューション

ソーラーパネルを使わず水位を遠隔監視

ソーラーパネルを使わず水位を遠隔監視

管理者の高齢化や農家の減少等により、豪雨時にため池管理者がため池の水位を把握できず、水位上昇によりため池決壊のおそれが生じていても市町が周辺住民に避難勧告等を発令することが困難な状況となっています。
このため、主として決壊すると人的被害を及ぼすため池において豪雨時にため池の水位を計測し、関係者が水位を把握できる観測システムの設置が求められています。
これまでも携帯電話網を使って水位計で計測したデータを伝送するシステムはありましたが、山間部にあるため池では太陽光パネルやバッテリーと組み合わせて電源を確保することから多くの機器が必要となり設置・更新費用が高額となること、また、場所によっては携帯電話での通信が困難で計測データを伝送できないこと等がネックとなり、ため池水位の計測システムの設置は進んでいませんでした。

LPWAを活用した結果と今後

ため池にELTRESによる水位監視システムを設置し、水位を遠隔監視する実証を行っています。
まだ実証の途中ではありますが、ため池の水位がパソコンやスマートフォンから確認ができるシステムはユーザーにとっても便利だと感じています。
また、気象庁の降雨データとため池水位を同時に確認もできるので、ため池が決壊しないよう事前の対策を行いやすくなると考えています。
今後は防災情報システムと連携により、ため池が危険水位に達した際に迅速に下流住民が避難行えるための対策や、ため池の水位予測により危険な状態になる前に水位を低下させるなどの対応ができるよう検討を進める予定です。

参照:兵庫県 ため池の水位を迅速に把握

街路灯を基地局の設置なく管理

抱えていた課題

これまで、特定省電力無線を用いた照明制御システムなど、IoT関連の導入、商品化を行ってきましたが、個別に複数の基地局が必要、カバーエリアが狭いといった課題を抱えていました。
特に、本開発品「街路灯の見える化システム」を国、地方自治体様へ提案していくにあたり、「数十km以上の広域エリアでサービス提供できること」が大きな課題でした。

LPWAを活用した結果と今後

国や地方自治体様の財産である街路灯を基地局の設置なく、管理できるようになる点、大きなPRポイントになると考えます。
現在、各自治体様にて試験運用を提案、2020年度の商品化を目指しております。

参照:街路灯の電力監視と設置位置管理


LPWAはIoTのニーズに対応した通信規格

IoT化の課題でもあったコストや消費電力を抑えたLPWAは、今後さらにIoT化をサポートしていく通信規格になっていくでしょう。

総務省が公開している情報通信白書でもIoT時代において活用される多様なアプリケーションの通信ニーズに対応する通信手段としてLPWAの重要性が明記されています。

※参考:平成29年版 情報通信白書|LPWA – 総務
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc133220.html

LPWAの通信規格は多くあり各業者も特徴がありますが、「ELTRES」の長距離を低コストで行える点は他社よりも勝っている点だと思います。ELTRESは徐々に全国展開され、IoT化できずに悩んでいる事業者の助けになることでしょう。

この記事で紹介しているLPWA事例はセンシング技術が使われています。LPWAを活用したIoTに欠かせないセンシング技術については下記記事で紹介しています。

IoTに必須のセンシングとは?種類と活用方法


最後に

ELTRESは安定通信・長距離伝送・低消費電力・高速移動体対応・GNSS標準搭載の特長を生かして様々な業界でご活用いただいております。

LPWAを活用したIoTソリューションについて、「興味がある」から「実際に活用方法を検討している」など、どのような内容でも結構です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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